人が手を動かしたり、考えたり、何かする時には、必ず脳が活動しています。それは、ある部位から他の部位に信号を伝えるための電気活動であったり、神経伝達物質といった脳内にある化学物質のやりとりであったりします。この神経伝達物質は多数あり、パーキンソン病では、その中のドーパミンという化学物質の不足により起こる病気です。ドーパミンは、脳幹の中脳の黒質と呼ばれる場所で作られるのですが、パーキンソン病では、この黒質の細胞が障害され、ドーパミンの産生が減少します。ドーパミンは、手足を動かす際などに、その動きが滑らかになるような調節をしています。それゆえに、パーキンソン病では、動きが鈍くなったり、手足の関節が固くなったりするような症状が現れます。以下のような症状が見られる場合は、是非専門医にご相談ください。
- (1)動きが鈍くなった
- (2)じっとしている時に手足がふるえる
- (3)歩き方がおかしい
- (4)顔の表情が乏しくなった
治療は?
足りなくなったドーパミンを外から補充することにより、上記の症状が改善されます。実際には、l-ドーパというお薬を使うのですが、副作用、特に長期に服用した場合の副作用が問題となってきます。薬の効く時間が短くなったり、薬の効き方が不安定になったり、また不随意運動(自分の意志とは無関係に手足が動いてしまう症状)などが起こります。
比較的若くして発病した場合、短期的には本薬剤で症状が緩和されても、長期的にみれば、マイナス面も多いことは知っておかなければなりません。最近では、ドーパミン受容体刺激薬というタイプのお薬が初期段階から単独あるいは併用で用いられます。薬の切れ味ではl-ドーパに劣りますが、l-ドーパで見られるような副作用がないこと、神経細胞の保護作用を持つ可能性があるという理由でよく用いられます。その他、抗コリン剤、MAO阻害剤などといった薬剤も用いられます。また、内科的治療以外に、脳の深部に電極を埋め込み、電気刺激を行う治療法などもあります。
この病気が治癒することはありません。投薬治療をうまく行えば、寿命は一般人の平均寿命と同じであると言われています。発症年齢、症状、進行速度などにより各患者さんの投薬内容も変ってきます。当院では、まず病気の説明をご家族を含め十分にさせていただきます。そして、治療方針につき話し合い、納得していただいた上で治療を始めていきます。